ワラビ

 日高山脈の裾、山フンベの牧場で、ごちそうになった山菜料理は忘れることができない。
肌寒く澄んだ空気につつまれた残雪の山里で、薪ストーブで背中を暖めながらいただく食事は格別で、新緑に萌える牧草も、芽吹いて間もない木立も、冷たくて痺れるような清流も、みんな最高のごちそうだ。

 山盛りの山菜料理が、テーブルにならべられ、この時ばかりはつもる話もとぎれて、もくもくと箸を休めることもなく食べつづける。山菜料理は、こうありたいものだ。
こそくに保存しておいた冷凍ワラビを、冷凍庫からだして食べようとしている。ワラビが一面に生えた丘を思い出しながら、牧場で教わった「ワラビのキムチあえ」をつくった。

【キムチあえ】


 冷凍ワラビをフリーズパックごと、水につけて解凍する。
あく抜きして刻んであるので、さっと水にさらし、よく水切りして市販の「キムチの素」であえる。
1時間ほどで、ワラビがなじんで美味しくなる。
味は変わらないが、窓のそとに風味がきわだつ果てしない自然がない。
ときどき、とおりすぎる木枯らしが、冷たく忍びよるだけだ。